レインツリーの国

レインツリーの国

レインツリーの国

メディアワークスより刊行されている「図書館戦争」「図書館内乱」から派生した一冊。


この作品は耳に障害をもったヒロインと主人公の恋愛小説である。
現代的な「メール」「ブログ」から始まるこの話は、今でも実際にあるかもしれない、現実の中の非現実をうまく表現しているといえよう。特に、最初のメールのやり取りの場面は、メールでのやり取り特有の間がうまく表現されていたように思う。当初、ヒロインのメールの表現が少しズレているように思えた。(自分で考える「リアルさ」よりもいささか文章での表現に傾倒しているような印象を受けた。)
が作者の罠というべきか、その理由はのちに判明し、さらにその表現の巧さに唸らされた。
また、都合のいい「ご都合主義」で話を進めず、あくまでも「生」と「生」のぶつかり合いを描き、作者自身の考えを通している点は好感が持てる。

せつなく、それでいてやさしい気持ちになれる。疲れた心にオススメした一本。